
テーブルの左上の角に現在使用中のポケピ。
(あと一番上の黒いのはポケピではありません♪)
1999年の末にポケピの第一世代が発表されて、僕はいきなりそれに注目したわけではなかった。正直この「ポケットPC」と呼ばれるキーボードの無い小さなコンピューターに僕はかなりの違和感や不信感を抱いていたし、そういう意味で僕はポケピがデビューして数年間は、全然ポケピというものを好きになれなかったのだ。当時の僕にはポケピはおもちゃのように見えたし、実際に立ってスタイラスでポケピに入力している自分の姿を想像して幻滅感をいだいたりしていた。
僕のポケピに対する反抗・不信はずいぶん長いこと続いたわけだが、それには理由がある。僕は当時それとは別のモバイルコンピューターを使っていた。一般にハンドヘルドPC(H/PC)と呼ばれる種類のものだ。H/PCはポケピと同じくマイクロソフトのWindowsCEをベースとしたモバイル機の一群で、当時発展の全盛期を迎えていた。ポケピとはコンセプト的にだいぶ違い、どちらかというと一般のノートパソコンの形をしていて、キーボードがついている(写真参照)。まあ僕に言わせるとポケピのお兄さんのような存在かもしれない。
ここではH/PCに関する詳しい説明は避けるが、それらは当時、モバイルコンピューティングの一つの頂点ともいえる時期において中心的な役割をになっていたのだ。その中でもヒューレット・パッカードの「ジョルナダ」シリーズやNECの「モバイルギア」(俗に「モバギ」の愛称で親しまれてきた)などは代表的な主役であり、それらとともに僕もH/PCの繁栄の中にどっぷりと身を浸していたというわけである。だからそんな状況の中でポケピがいきなり発表されても当時の僕は真剣に受け止めなかった。実際僕はポケピのことを「Palm Pilotの2番煎じ」ぐらいにしか考えず、食わず嫌い的に遠ざけていたのであった。
僕がH/PCからポケピへと移行したのはおそらく2002年ごろだと思う。当時ポケットPC2002(ポケピの第二世代)が発表されて、僕は少しずつポケピに興味を持つようになっていった。時を同じくしてマイクロソフトはH/PC系のOS開発を終了する方向にことを進めていて、それが原因でヒューレットパッカードやNECも新しいH/PCを発表しなくなっていった。そしてついにヒューレット・パッカードが彼らの最後のH/PCとなるジョルナダ728シリーズを、そしてNECがモバイルプロの最終版となる900シリーズを発表してH/PCの歴史は(少なくとも新製品の開発については)幕を閉じた。
そのような状況の中、僕はしばらくの間ポケピとH/PCを兼用していた。当時はテキスト入力(ワープロ、メール、表計算、データベース)などはH/PCで、そしてマルチメディアやPDA(アドレス帳、カレンダー)のタスクはポケピで・・などと割り切って使っていたわけだが、最終的にポケピで全部できるだろうという結論に達し、H/PCの携帯をやめたのである。テキスト入力にしてもポケピ+キーボードでOKだし、わざわざ2つのコンピューターを持ち歩くのは非合理だという結論に達したのだった。僕がH/PCを日常的に使わなくなったのはこの時からだ。
僕がH/PCを使わなくなってから何年にもなるが、気持ちの上ではH/PCに対する強い未練が今でもある。実際世の中にはH/PCだけをずっと使い続けてきているハードコアな人たちが今でもいるし、その人たちが作っているオンライン・コミュニティーもある。マイクロソフトにH/PC用OSの開発を再開してほしい・・という懇願書を提出した情熱的H/PCユーザーたちもいるくらいだ。僕はそんな彼らに強い尊敬の念をもっているし、実際自分もH/PCが使える機会が来たらまた是非使ってみたいという希望もある。
僕がH/PCを使わなくなったもう一つの理由に「日本語化の難しさ」というのがある。先に僕は英語版ポケピの日本語化について書いたが、英語版H/PCの場合そう簡単にはいかないし、あまり日本の先人たちの例も残っていないのが現状である。つい今年夏にも僕は米国版モバギ(モバイルプロ780)の日本語化に挑戦して、一月後に挫折した。H/PCの場合なぜかポケピのようには簡単には行かず、失敗してしまうのだ。その上僕はH/PC用の日本語変換プログラムを所有していない。ポケピではATOKを購入し使っているが、H/PC用ATOKは販売が完了してもう新品では入手できず、中古でもなかなか手に入らない(米国内ではまず無理)のが現状のようだ。そういうこともあり僕はH/PCをますます使わなくなってしまったのである。
だがそんな矢先、今年になっていきなり「ネットブック」の一群が登場しセンセーショナルな成功をおさめた。この状況は僕を驚かせたと同時に妙に「懐かしい」気持ちを抱かせたのである。それはネットブックが少なくとも形や大きさにおいて、かつてのH/PCとよく似ているからで、H/PCを使わなくなって何年にもなる僕の心にそれは一つの新しい風穴を開けた感じになったのだった。もちろんLinuxやWindowsXPをベースにした超小型ノートパソコンであるネットブックの一群とWindowsCE系で開発が完了しているH/PCとはまったく違う製品である。ただ形やコンセプトの上で類似点があることも否定できない事実だ。そんな意味で僕はネットブックに対して、とても「懐かしい」気持ちを抱いたのだと思う。僕はネットブックを早速購入し、ポケピと兼用で使っている。これはかつて僕がH/PCとポケピを兼用していたのと少し似ている部分がある。
そんなわけで長々と書いてきたが、これが僕のモバイルコンピューティングの遍歴である。この10年間を振り返ると、事実とても楽しかった。人は僕をオタクと呼ぶかもしれないが、僕にとってのモバイルコンピューティングはある意味で高級な「遊び」なのであり、だから肩の力を抜いてこれからも存分楽しんでゆきたいなあと思っている今日この頃なのである。
